特集/2003年9月

葛の葉

くずのは

 夏から秋にかけて葛は、あらゆる場所で生い茂りはびこって、すべてのものを覆い尽くしてしまう勢いです。10年ほど前、故郷の熊本で山の方へドライブした際、道路わきが全てこのつる植物に覆われているのに驚いたことがありました。林業従事者の不足が問題になっていた時期で、人の手入れがないと山は葛の葉に占領されてしまうものなのだと思ったのをおぼえています。
 水田ばかりの平野部で育った私は、葛は山の植物だと思い込んでいたのですが今思えば、人が常に管理して田んぼの周りに葛など生やさなかったのでしょう。街中でも案外見かける植物で、現在の大阪の住まいの近くでは、少し空き地があるとすぐに生い茂っています。風にゆらぐ大きな葉っぱの間に赤紫の豆科特有の花をつけるのはこの季節。
 この可愛らしい花にも惹かれますが、なんといっても葛の魅力は、幾重にもおり重なった葉が作るその奥の暗がりです。「異界への入口」・・・のぞいてみたいような恐いような・・そんなイメージを昔の人ももったからこそ狐が美女に化けて人間の男と結婚する「葛の葉伝説」も生まれたのかと思っています。
 葛の葉の茂るうらさびしい場所で美しい女性とすれ違ったら一度、振り返って確認しましょう・・・・ふさふさのしっぽがついているかもしれません。



華シリーズ
9月  葛