乳母オネの図

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 昔、東方にリトルイーストと呼ばれる小さな島国がありました。平和な統治の続いた歴史ある王国が滅びたのち、その城に「西の魔女」と呼ばれる赤毛の魔法使いと双子の娘たちが、暮らしておりました。大陸から離れた孤島には訪れる人もなく、温暖な気候のせいで季節ごとの花々が花期長く咲きみだれ、島は静かな楽園のごとき風情でした。
 西の魔女は多くの力を持っていましたが、特に薬物については並ぶ者なき専門家でありました。島に自生の、あるいは栽培した植物や昆虫や小動物からつくる病薬、麻薬、毒薬そして媚薬は、戦乱の絶えることのない近隣諸国の王侯にとって、多額の金銀宝物を支払っても惜しくない商品でした。
 人間嫌いの魔女でしたが商売繁盛のため多忙で、11才になる二人の娘「ヒナゲシ」と「アネモネ」は主に乳母の「オネ」に育てられました。料理や家事はもちろんの事、農園の管理から家畜の世話、魔女の助手としての仕事までオネは城の内外のあらゆる仕事をすばらしい働きっぷりと才覚でかたづけていきます。巨大な胸とおしりの持ち主である彼女は白いフリルのついたメイド服にいつも清潔なエプロンを身につけ、スカートの外に出した小さなしっぽをプルプルさせながら一日中かけずりまわっていました。
 他に城の住人は表門と裏門を守る門衛の「ニキ」と「ナック」。冷静で皮肉屋のニキとお人好しで抜けたところのあるナック。気のいい連中でしたが二人はとても仲が悪く、しょっちゅうもめ事を起こしてはオネにこっぴどくしかられていました。魔女の好みで、粋な門衛の制服を着込んでいるものの実際には城を訪れる者などなく、昼間はオネにたのまれて料理に使ううさぎや魚を捕ったり、傷みの目立ちはじめた城の修理をするのが彼等の仕事でした。
 娘たちには魔女の商品の材料を採集する仕事が与えられていました。雨の日を除いて毎日、娘達は島の方々へ出かけます。島の周囲を海岸づたいに歩けば、まる一昼夜かかる程度の小さな島でしたが、地形は変化に富んでいて、男山女山(オヤマメヤマ)と呼ばれる2つの山とそのすそ野に広がる湖を中心に湿原があり、草原があり丘や林や森があり・・それぞれに寒冷地から熱帯のものまで多くの種類の果樹草木、きのこ類が育ちました。また鳥やは虫類、両生類、小型のほ乳類、昆虫類、くもの類も豊富でしたので、二人はこの仕事がとても気にいっていて、母に頼まれた薬草や毒きのこやサンショウウウオを採集するついでに、名料理人であるオネのために、ブルーベリーを摘みわらびやしめじやクレソンを探して一日を過ごし、日暮れ前に城へ帰るのが日課でした。
 二人がそうして島を歩き回る時、城を出た直後から彼女らが「ビキ」と呼んでいるたくさんのかえるが現れては、まるでお供のように一日中ぞろぞろと付きまとうのでしたが、二人は少しも不思議に思うことはありませんでした。物心ついた時からそんなふうでしたので、ビキとはそんな生き物だと思っていたのです。


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双子の娘達の図

門衛ニキの図

門衛ナックの図

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