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 昼も過ぎる頃、ヒナゲシとアネモネは森の入り口のあたりでオネが持たせてくれたお昼を食べながら休んでいました。「お母さまに頼まれた今日の仕事は、すっかり片付いてしまったわ。干物用のいもりが10匹、虹色とかげのしっぽが5本、赤まだら蛇の抜け殻1体分・・。」ヒナゲシはペットにしている白ねずみを腕や肩で遊ばせながら言いました。 「蓮の葉の朝露を小瓶に集めたけれど、朝鮮朝顔の実はまだ小さいわ。もう2〜3日待ったほうがいいみたい。私も今日は急ぐ仕事はなくってよ。」 妹にあたるヒナゲシが生き物を、ほんの少しだけ姉のアネモネが植物や鉱物の採集を担当していました。

 お天気のいい午後の時間をどう過ごそうか思案している時、ヒナゲシの視界の端に何かきらきらしたものが映りました。 突然、森に向かってかけ出した妹に驚いて、アネモネも後を追いました。黒の森と呼んでいる鬱蒼とした森の入り口のあたり、野いばらがひとむら茂ったその根元で、棘のある茎に、胴回りが大人の腕ほどもありそうな白いとかげが絡め捕られていました。逃れようともがくその真珠色の鱗に木漏れ日があたって、キラキラと輝いて見えたのです。今までに見たことのない美しい獲物に2人の採集家は興奮しました。ヒナゲシは肩からかけた麻袋の口をほどくととかげの頭の方で広げてすっぽりかぶせようとしましたが、とかげはますます暴れるばかり。いばらの棘が胴を引っ掻いて、血のにじんだ鱗が何枚かはがれ落ちました。アネモネが篭からはさみを取り出していばらの茎を2〜3箇所切ってやると獲物は、麻袋を広げるヒナゲシの手元をするりとかわして逃げ、暗い森の中へかき消えました。
すぐに、追って走り出すヒナゲシをアネモネが止めます。「まって、黒の森に入ってはいけなくってよ!」「大丈夫。今日はお母さまは留守。あのいっつも私達を見張ってるおしゃべりオウムだっていないわ。きっとお共について行ったのよ。」魔女の手下のオウムは、日頃島の上空を飛び回っては、子ども達が危険な所へ行きそうになると口うるさく注意し、それを逐一魔女に報告するのを仕事にしていましたが、今日は姿が見えません。かまわず森の奥へ進む妹にしかたなく、姉もついて行くことにしました。



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おしゃべりオウムの図