特集/2003年4月

 月並ですが、一番好きな花は桜です。桜ほど暗闇に似合う花はないし、死の似合う花もないでしょう。凄にして艶。昔からあらゆる芸術作品に登場して画面や舞台を華やかに彩ってきた花ですが、絵にするとなるととてもむずかしく、今のわたしの技量では桜そのものを主役として描く力はありません。住まいのすぐ近所に桜の名所があって、この季節になると毎年「あ!スケッチに行かなきゃ」と思いながら、うかうかしているうちに桜は散ってしまいます。なんとかスケッチができたとしても欲しいイメージとはほど遠く、いまだにきちんと絵絹の作品にしたことはありません。
 小倉遊亀さんのうずうずとエネルギーに満ちた桜の小枝の絵、奥村土牛さんの強さと軽やかさをあわせもったしだれ桜の絵に憧れながらも、「私の桜」は闇の中でエンドレスに花びらを散らしつづけるなまめかしい桜です。今は桜姫や花子という桜の精のような女たち(かなり強烈な精ですが・・・)の姿をかりて表現することしかできないでいます。
  たった一人、落ちてくる花びらのなかにずーっとたたずんでいられたらどんなに幸せだろう・・・と思っていたら最近、十一歳になる次男が「俺のなかのベストワンシーンは、黒バックで桜が散ってるなかでお気に入りバンドの桜って曲を聴くことだな」と言うのを聞いて、「おまえもか!」となんだか納得。古来どれだけ多くの人たちが、せつない恋にも似た思いを桜にいだいてきたのでしょう。
 手に入れたと思ってもすぐにかき消えてしまう、独り占めしたいと思ってもかなわない・・・・。




さくら 桜 

歌舞伎舞踊「京鹿子娘道成寺」より
白拍子花子
蛇体となった清姫に釣鐘のなかで焼き殺された若僧安珍。その供養のための法要に現れた白拍子は、華やかに舞踊った後,清姫の本性を現わして再び大蛇に変身する。背景も前面も満開の桜でうめつくされた舞台は華やかでドラマチック

桜姫
ギャラリー幻想ろまんにて展示中